雨の日の盲導犬
今朝、小雨そぼ降るバス停で
犬を連れた老婦人の道を
一瞬塞ぐように立っていた自分に、犬が気が付き
こちらが退く間、彼も立ち止まった。
歩み始めた犬に「誰か居たの?」と声をかける婦人。
そのまま二人は、バス停の脇に立った。
バスが来る南方へ
愛くるしい眼差しを向けて忍耐強く立つ彼に、
婦人は愛情のこもった声をかけている。
やって来たバスのドアが開くと、
自分のお抱え運転手に、
彼は、うやうやしく目礼を投げ、
すっと婦人をエスコートしながら乗り込んだ。
レインコートがキマってる。
乗車してすぐ右の優先席に座った婦人は
膝元に彼を立たせながら引き寄せる。
床が濡れているので、
せっかくの伊達なレインコートを無駄に汚させないためだ。
普通にゴールデンリトリバーが乗り込んで来た様を
好奇心で一杯になった暖かな視線が、
献身的な彼に注がれる。
近くの乗客が声を掛けずにいられない。
いちいち礼を持って、応対する婦人。
彼はこうべを婦人の膝に載せ、
撫でられながらじっとしていた。